2020.02.08
契約書の「瑕疵」条項を修正すべきか
玉に瑕(たまにきず)
「瑕疵(かし)」という言葉は、
日常では、あまり使われません。
「瑕疵」という言葉ですが、
「瑕」も「疵」も、
「きず」という意味があり、
「たまにきず」という
ことわざは、
「玉に瑕(※)」と書くそうです。
※辞書によると、元々は、
「宝石の表面にできた細かい“きず”」
を表し、
転じて、
「ほとんど完全なのに、
わずかな欠点がある」
という意味になったとのことです。
買った物に「瑕疵」
法律上、何が言えるのか。
どんな状態が「瑕疵」なのかは、
契約の内容によって変わります。
例えば、
買った自動車の
エンジンが動かなかった場合、
通常は瑕疵に当たりますが、
専ら「展示用」の
自働車であれば、
瑕疵に当たりません。
2020年4月1日から施行される
改正民法では、
「瑕疵」
という用語が無くなり、
「種類、品質又は数量に関して
契約の内容に適合しない
(契約不適合)」
という表現に改められました。
買った物に契約不適合
買主は売主に何が言えるか。
買った物に契約不適合があった場合、
法律上、
以下の請求ができます。
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(1)改正前
(2020年4月1日より前)
に買った場合
①損害賠償請求
②契約解除
買った物に契約不適合があった場合、
売主に対し、
一定の条件を充たせば、
損害賠償請求や契約自体の解除
をすることができます。
(2)改正後
(2020年4月1日以降)
に買った場合
①損害賠償請求
②契約解除
③追完請求
④代金減額請求
購入した物に欠陥があった場合、
通常は、
無償で修理してもらったり(修補)
新品と交換してもらったり(代替物)
値引きしてもらったり(代金減額)
することが多いでしょう。
改正民法では、
購入した物に契約不適合があった場合、
買主は、
①損害賠償
②契約解除
だけでなく、
③追完請求
(修補/代替物引渡/不足分引渡)
ができ、
さらに、
相当の期間を定めて追完請求をしたのに、
その期間内に追完されないときは、
④代金の減額請求
ができるとされました。
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▼
売主の追完権
なお、欠陥が軽微な場合
常に新品との取り換えを要求できる
というのも不都合です。
そこで、改正民法では、
買主に不相当な負担を
課するものでないとき、
売主は、
買主から請求された方法
(例:新品との交換)
とは異なる方法
(例:修補)
による追完ができる
と規定されました。
契約書の「瑕疵」条項
を修正すべきか
従来の契約書の雛形に
「瑕疵担保責任」条項が
入っていることがあります。
改正民法では、
「瑕疵」という言葉は
消えてしまいますが、
従来の
「瑕疵担保責任」条項の
入った雛形のまま
契約を締結したとしても、
「何か不都合なのでは?」
「契約書を巻きなおす必要がある?」
と案ずる必要はありません。
なぜなら、
改正民法が施行された後も、
「瑕疵」という用語は、
「契約不適合」の意味だと
解釈されるでしょうし、
そもそも、
民法が改正される前も、
法律の解釈として、
【「瑕疵」があれば
追完(修補、代替物引渡、不足分引渡)
の請求ができる】
と考えられていたからです。
とは言え、
これから売買契約を締結する
のであれば、
改正民法に沿って改訂された
契約書の雛形を使用するに
越したことはないでしょう。
そのような雛形であれば、
従来の
「瑕疵担保責任」条項は、
「契約不適合責任」条項に
改訂されて、
改正民法に沿った内容になっている
はずです。